リスキリング実践ナビ

未経験者がビジネスで役立つデータ分析スキルを習得するロードマップ：Excel, SQL, BIツール編

なぜビジネスパーソンにデータ分析スキルが必要なのか

現代のビジネスにおいて、データは意思決定や戦略立案に不可欠な要素となりました。データの傾向を読み解き、根拠に基づいた判断を下す能力は、個人の市場価値を高める上で非常に重要です。特に、未経験から新たな分野へキャリアチェンジを目指す方にとって、データ分析スキルは強力な武器となり得ます。ITやデータサイエンスといった専門分野だけでなく、営業、マーケティング、企画など、多くの職種でデータに基づいたアプローチが求められています。

しかし、「データ分析」と聞くと、専門的な知識や複雑なツールが必要だと感じ、何から学べば良いのか迷ってしまう方も少なくありません。本記事では、未経験者がビジネス現場で実際に役立つデータ分析スキルを習得するための具体的なロードマップを、主要なツールであるExcel、SQL、そしてBIツールに焦点を当てて解説します。

ビジネスにおけるデータ分析スキルの全体像

ビジネスにおけるデータ分析は、一般的に以下のステップで進められます。

1. 目的設定: 何を知りたいのか、どんな課題を解決したいのか、分析の目的を明確にします。
2. データ収集: 目的達成に必要なデータを収集します。社内データベース、ウェブサイト、アンケートなど、様々なソースからデータを集めます。
3. データ加工・前処理: 収集したデータは、そのままでは分析に使えないことがほとんどです。欠損値の処理、データの形式変換、複数のデータを結合するなど、分析に適した形に加工します。
4. データ分析: 統計的な手法や特定のツールを用いてデータを分析し、傾向やパターンを発見します。
5. データ可視化: 分析結果をグラフや表などを用いて分かりやすく表現します。これにより、データの傾向や分析から得られた示唆を直感的に理解できるようになります。
6. 示唆抽出と報告: 可視化された結果からビジネス上の意味合い（示唆）を抽出し、関係者に報告します。この示唆に基づいて具体的な行動や改善策が検討されます。

未経験者がこれらのステップすべてを最初から完璧に行う必要はありません。まずはステップの一部、特にデータ加工、分析、可視化に必要なツールの使い方から習得していくことが現実的です。

学ぶべき主要ツールとスキル

ビジネス現場でデータ分析を行う上で、まず習得しておきたい主要なツールとスキルを3つご紹介します。

1. Excel：データ加工・集計・可視化の入り口

多くのビジネスパーソンにとって最も身近なツールです。Excelは、小規模なデータの管理、集計、簡単な分析、グラフ作成などに非常に優れています。高度な専門知識がなくとも、以下の機能を使いこなすことで、データの基本的な分析が可能になります。

• 基本的な操作: データの入力、編集、並べ替え、フィルター
• 関数: SUM（合計）、AVERAGE（平均）、COUNTIF（条件付き個数）、VLOOKUP（データの検索・参照）、HLOOKUP、IF（条件分岐）など、業務でよく使う関数
• ピボットテーブル: 複雑なデータを様々な切り口で集計し、傾向を把握するための強力な機能
• グラフ作成: 棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなど、データを視覚的に表現する方法
• 条件付き書式: データの傾向を色などで視覚的に強調

Excelの習得は、データ分析の考え方や基本的なデータ操作に慣れるための第一歩として最適です。

2. SQL：データベースからのデータ抽出・加工

ビジネスで扱うデータの多くはデータベースに格納されています。SQL（Structured Query Language）は、このデータベースから必要なデータを抽出、加工、更新するための標準的な言語です。SQLを使えると、大量のデータから分析に必要な部分だけを効率的に取り出すことができるようになります。

学ぶべき基本的なSQLの構文は以下の通りです。

• SELECT: どの列（カラム）を取得するか指定
• FROM: どのテーブルからデータを取得するか指定
• WHERE: どのような条件を満たすデータを抽出するか指定
• GROUP BY: 特定の列の値でデータをグループ化し、集計を行う
• JOIN: 複数のテーブルを結合してデータを取得
• ORDER BY: データを特定の列で並べ替え

SQLは、Excelだけでは扱いきれない大規模データや、複数のデータソースを組み合わせる際に不可欠なスキルです。

3. BIツール：データの可視化と共有

BI（Business Intelligence）ツールは、データベースなど様々な場所に格納されたデータを集計・分析し、分かりやすいグラフやダッシュボードを作成するためのツールです。TableauやPower BIなどが代表的です。BIツールを使うことで、分析結果を視覚的に共有し、関係者間で迅速な情報共有や意思決定を行うことが容易になります。

BIツールで学ぶべき基本的なスキルには以下のようなものがあります。

• データソースへの接続: データベースやExcelファイルなど、様々なデータ源に接続する方法
• 基本的な集計・計算: 合計、平均、割合などの基本的な計算
• グラフ・ダッシュボード作成: 目的に合ったグラフを選択し、複数のグラフを組み合わせてダッシュボードを作成する方法
• フィルター・ドリルダウン: データを特定の条件で絞り込んだり、詳細なデータを確認したりする方法

BIツールは専門性が高いと思われがちですが、基本的な操作は比較的直感的で、データを魅力的に見せる能力を効率的に高めることができます。

未経験者がビジネスで役立つデータ分析スキルを習得するためのロードマップ

上記のツールとスキルを踏まえ、未経験者が実践的なデータ分析スキルを習得するためのステップは以下のようになります。

ステップ1：ビジネスにおけるデータ分析の基礎理解 まずは、なぜデータ分析が必要なのか、どのような目的でデータが使われるのかといったビジネスの視点からデータ分析の役割を理解します。難しい技術的な知識よりも、データから何を知りたいのか、どのように活用したいのかという考え方を養うことが重要です。

ステップ2：Excelでのデータ操作・集計・可視化の習得 最も身近なExcelから始めます。基本的な関数、ピボットテーブル、グラフ作成機能を重点的に学習し、実際にサンプルデータを使って手を動かします。これにより、データの基本的な扱いに慣れ、集計・分析のイメージを具体的に掴むことができます。

ステップ3：SQLでのデータ抽出・加工の基礎習得 データベースの仕組みを理解し、SQLの基本的なSELECT文、WHERE句、GROUP BY句、JOIN句などを学びます。オンラインの実行環境や学習サービスを利用して、実際にクエリを書いてデータを操作する練習を行います。

ステップ4：BIツールでのデータ可視化・ダッシュボード作成の基礎習得 代表的なBIツール（Tableau PublicやPower BI Desktopなど、無償で利用できるものもあります）を使い始めます。簡単なデータを読み込み、基本的なグラフを作成し、複数のグラフを組み合わせたシンプルなダッシュボードを作成してみます。

ステップ5：実践練習と応用 公開されているサンプルデータや、可能であれば匿名化・加工した自身の業務データなどを使って、学んだスキルを組み合わせたデータ分析に挑戦します。ビジネス課題を想定し、「このデータを分析すれば何が分かるか？」という問いを設定して取り組むと、より実践的なスキルが身につきます。

ステップ6：継続的な学習と発展 基本的なツールとスキルを習得したら、さらに高度なExcel関数、複雑なSQLクエリ、BIツールの応用機能へとステップアップしたり、PythonやRといったより専門的な分析ツールに関心を広げたりすることも可能です。

効率的な学習方法と時間管理のヒント

多忙な社会人にとって、学習時間の確保は大きな課題です。しかし、限られた時間でも効率的に学ぶ方法は存在します。

• オンライン学習プラットフォームの活用: Coursera、Udemy、Progateなどのオンラインプラットフォームでは、初心者向けのデータ分析コースや、Excel、SQL、BIツールの使い方に関する実践的な講座が豊富に提供されています。動画講義と実習を通じて、自分のペースで体系的に学ぶことができます。各プラットフォームの特徴や選び方については、別の記事で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてみてください。
• 短時間での集中学習: まとまった時間が取れない場合でも、1日30分でも良いので継続して学習時間を確保します。通勤時間中に講義動画を視聴する、昼休みや就寝前に短い演習問題を解くなど、スキマ時間を活用する工夫が有効です。
• 実践中心の学習: ツールの使い方を覚えるだけでなく、実際に手を動かしてデータ分析を行うことが最も重要です。サンプルデータや業務データ（個人情報などを除いたもの）を使って、具体的な課題解決を想定した分析練習を重ねましょう。
• 学習コミュニティへの参加: オンラインコミュニティや勉強会に参加することで、他の学習者と交流したり、質問したりすることができます。モチベーションの維持にも繋がります。
• 目標設定と進捗管理: 何を、いつまでに、どのレベルまで習得するかといった具体的な目標を設定し、学習の進捗を定期的に確認します。これにより、学習計画が曖昧になることを防ぎ、着実にスキルを身につけることができます。リスキリング学習における進捗管理の詳しい方法については、関連の記事でご確認いただけます。

まとめ：実践的なデータ分析スキル習得の第一歩を踏み出す

未経験からビジネスで役立つデータ分析スキルを習得することは十分に可能です。まずはExcel、SQL、BIツールといったビジネス現場でよく使われるツールから、段階的に学習を進めるロードマップを描くことが重要です。

忙しい中でも効率的に学習を進めるためには、オンライン学習プラットフォームを活用したり、短時間でも継続する習慣をつけたりといった工夫が効果的です。学んだスキルは、現職での業務改善に活かすだけでなく、将来的なキャリアチェンジの大きな強みとなります。

このロードマップを参考に、ビジネスにおけるデータ分析スキル習得の第一歩を踏み出していただければ幸いです。